要点
- Reuters が入手した Meta の内部資料に、2024年の売上のおよそ10%(約160億ドル)を詐欺や禁止された商品の広告から見込む、という試算があった。
- 内部資料によると、Meta は「詐欺の可能性が95%以上」と判断したときだけ広告主を止め、それより低い疑いの広告主には高い広告料を払わせて広告を出させていたとされる。
- 日本では著名人になりすました投資詐欺の広告で被害が続いている。Meta を訴えた裁判の最初の判決は、2026年10月に請求を退けた。
何が起きたか
米国の投資家 Mark Cuban 氏が、自分の顔と声をまねた AI のディープフェイク(本物そっくりに作った偽の映像や音声)が、糖尿病の「治療薬」を売る詐欺広告に使われていると話した。Moneywise の報道によると、Cuban 氏は8月のポッドキャスト番組 Pivot で、高齢の人からその商品について問い合わせのメールが毎週届くと言い、Facebook は高齢の人がだまされていると知っている、という趣旨を述べた。Meta は Moneywise の問い合わせに、記事の公開までに答えていない。
この発言が注目された背景に、Reuters の調査報道がある。Reuters は2025年11月6日(米国時間)、Meta の内部資料をもとに報じた。
特に問題になったのは、詐欺が疑われる広告主の扱いだ。Reuters の報道を伝えた TechCrunch によると、Meta が広告主のアカウントを止めるのは、仕組みが「詐欺だ」と95%以上確信したときに限られる。そこまで確信できない相手には、より高い広告料を払わせるとされる。それでも広告を出す広告主がいれば、そのぶん Meta の収入になる。
数字の大きさも資料に出ている。「リスクが高い」と分類された詐欺広告は、1日に約150億件表示されていた。2024年後半の資料によると、この種類の広告による収入は年に約70億ドルだった。対象を詐欺や禁止商品(違法な賭博、投資詐欺、禁止された医薬品など)の広告全体に広げると、見込みは約160億ドルになり、2024年の売上のおよそ10%に当たる。被害の側から見た見積もりもある。2025年5月の社内資料は、米国で成功した詐欺のおよそ3分の1に Meta のサービスが関わっているとしていた。
Meta は反論している。Reuters によると、Meta は対策の成果として、詐欺広告についての利用者の通報がこの18か月で58%減ったこと、2025年に1億3,400万件を超える詐欺広告を消したことを挙げた。広報の Andy Stone 氏は、資料が「偏った見方」で、Meta の詐欺への取り組みをゆがめていると述べた。10%の見積もりについては「大まかで、範囲を広く取りすぎた」ものだという。
米上院議員の Richard Blumenthal 氏と Josh Hawley 氏は2025年11月、この報道を受けて、FTC(米連邦取引委員会)と SEC(米証券取引委員会)に Meta を調べるよう求めた。Meta はこの訴えを「誇張で、誤っている」としている。
日本の利用者への影響
日本は、この問題の中心にいる国の1つだ。Reuters は2025年12月31日の続報で、内部資料をもとに、日本の規制当局が詐欺広告を問題にしたとき、Meta が当局の使う検索の語や著名人の名前を調べ、Ad Library(誰がどんな広告を出しているか公開する仕組み)でその検索に出る詐欺広告をくり返し消していたと報じた。日本は Meta がおそれていた厳しい広告主の確認ルールを入れず、Meta はこのやり方を他の国でも使う「手引き」に加えたとされる。Meta は、消した広告は Ad Library だけでなく Meta のサービス全体から消えると反論している。
被害は大きい。警察庁によると、2025年の SNS 型投資詐欺は9,523件、被害額は約1,288億円で、どちらも前年より5割近く増えた。最初の接触は「バナー等広告」が3,785件で最も多い。
裁判も続いている。偽の投資広告の被害者が Meta を訴えた裁判は、全国の6つの地裁に起こされている。その最初の判決が、2026年10月15日に横浜地裁で出た。時事通信によると、訴えたのは被害者6人と1つの法人で、Meta の日本と米国の法人に計約4,300万円の賠償を求めていたが、請求は退けられた。判決は、掲載の時点で詐欺の偽広告だと「容易に認識できたとは言い難い」とした。広告が本当かを調べて載せないようにする義務が Meta にあった、とも認めなかった。原告側は控訴するつもりだと時事通信は伝えている。
今すぐやること
- 有名人が投資やもうけ話、薬をすすめる広告は、まず偽物と考える。 顔も声も本物そっくりに作れる。広告に「AI で作った」と小さく書いてあっても、中身の誘いが詐欺であることは変わらない。
- 広告から LINE のグループや個人のやりとりに誘われたら、そこで止める。 警察庁の統計でも、広告やダイレクトメッセージがきっかけの大半を占める。
- 本人の公式の発信で確かめる。 有名人の公式サイトや、認証済みのアカウントで、本当にその話をしているかを見る。
- 怪しい広告は通報する。 お金を払ってしまったら、すぐ警察(相談は #9110)と、消費者ホットライン(188)に連絡する。
- 家族、特に高齢の家族に伝える。 Cuban 氏に届く問い合わせも、高齢の人からだという。
背景
総務省は2024年6月、著名人や有名企業になりすました投資の偽広告が広がり、SNS 型投資詐欺の被害が急増したとして、Meta などの大手の事業者に、広告の審査や削除をきちんと行うよう文書で求めた。大手のプラットフォームに削除の対応を早め、運用を公開するよう義務づける情報流通プラットフォーム対処法も施行された。
Meta は2024年10月から、著名人の顔を使った詐欺広告(celeb-bait)を、顔認識で本人のプロフィール写真と照らし合わせて見つける仕組みを試し、広げている。ただ、Reuters の報道が示すのは、見つける力の問題だけでなく、詐欺の疑いがある広告からも収入が入る仕組みそのものへの疑問だ。
技術者向けの詳細
- この記事で参照した Reuters の報道は、2025年11月6日の「Meta is earning a fortune on a deluge of fraudulent ads」と、2025年12月31日の「Meta created playbook to fend off pressure to crack down on scammers」。どちらも Reuters が入手した内部資料が根拠で、資料そのものは公開されていない。
- 内部資料の数字(Reuters による):2024年の売上の約10%(約160億ドル)を詐欺・禁止商品の広告から見込む。高リスクの広告を1日に約150億件表示。高リスクの種類の広告の収入は年約70億ドル(2024年後半の資料)。
- 広告主の停止は、詐欺の確率の推定が95%以上のとき。それに届かず、詐欺の疑いがある広告主には、より高い広告料を課すとされる(TechCrunch による)。
- Meta の説明:詐欺広告の通報は18か月で58%減、2025年に1億3,400万件超の詐欺広告を削除。
- 日本の統計:警察庁「令和7年における SNS 型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等」(確定値、2026年6月5日公表)。SNS 型投資詐欺は9,523件、約1,288.0億円。最初の接触はバナー等広告3,785件、ダイレクトメッセージ3,549件。
- 総務省の要請文書は2024年6月21日付。Meta には直接、月間の利用者が1,000万人以上の大規模な事業者には一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)を通じて送った。
- 横浜地裁の判決(2026年10月15日)は、原告が広告を見た2023年4〜11月の時点で、虚偽だという情報が Meta に寄せられていたとは認められない、とした。さいたま・千葉・名古屋・大阪・神戸の地裁でも同じ種類の訴えが続いている。



