情報被害の話ではない

Europol・Eurojust、投資詐欺サイトの供給元を摘発 7人逮捕

Europol と Eurojust の支援で欧州などの警察がサーバー100台超を押収し、7人を逮捕した。キプロスとイスラエルの会社が、偽の取引サイトを詐欺の電話センターに貸していた疑い。日本の SNS 型投資詐欺との共通点と見分け方も載せる。

要点

  • 欧州などの警察が、偽の投資サイトを詐欺グループに用意していたとされる会社を摘発し、サーバー100台超を押収、7人を逮捕した。
  • 手口は、広告で誘う、少額を入れさせる、偽の利益を見せる、もっと入れさせる、引き出そうとすると先延ばしして消える、という流れだ。
  • 日本の SNS 型投資詐欺も、2026年上半期だけで被害額が約798億円にのぼり、広告から始まる流れはよく似ている。

何が起きたか

EU の司法協力の機関である Eurojust と、警察協力の機関である Europol は、2026年11月3日に、投資詐欺の仕組みを支えていたとされる会社への一斉捜査を発表した。

Eurojust の発表によると、捜査の日に17か所が捜索され、100台を超えるサーバーのほか、証拠や資産が押さえられた。7人が逮捕され、ドイツへの引き渡しの手続きに入る。捜索先には、Kosovo にある電話センター(客に電話をかけて勧誘する拠点)も入っていた。Eurojust は、ドイツのほかにアルバニア、イスラエル、キプロス、Kosovo、北マケドニア、フィンランドの警察や検察が加わったとしている。全体の指揮をとったのは Itzehoe(ドイツ)の検察だ。

被害の広がりは大きい。被害を受けたかもしれない人は少なくとも50の国にいると Europol はみている。損害は400万ユーロを超えると Eurojust は見積もる。捜査のきっかけは、2022年にドイツで出された1件の被害届だった。取引サイトに貯金を預けた夫婦が、もうけたはずのお金を引き出せないと訴えたものだ。

Eurojust によると、2022年と2025年にも逮捕や捜索があった。アルバニア、Kosovo、北マケドニアでは、詐欺の電話センターが動いていたとされる。そうした電話センターのグループに偽のサイトを渡していた疑いがあるのが、キプロスとイスラエルに拠点を置く会社だ。Eurojust は、これを「crime-as-a-service」(犯罪に使う道具を商売として提供すること)と呼んでいる。会社の名前や逮捕された人の名前は、発表には出ていない。

Eurojust が示した手口で、軸になっているのは画面に出る「利益」だ。被害者が少しのお金を入れると、偽の取引サイトは実際にはない利益を表示する。電話の担当者はその数字を材料にして、もっと大きな額を入れるよう強く迫る。最初の誘い文句は、暗号資産や外国為替、株で短い間に大きくもうかるという話だった。お金を戻そうとすると話を引き延ばされ、最後は連絡が取れなくなる。

BleepingComputer は、うその広告から偽の投資サイトに人を誘い、そこで集めた個人情報を電話センターに売っていた、という流れも伝えている。

日本の利用者への影響

今回の事件で、日本の被害者がいたかは発表に書かれていない。分からない。

ただ、手口は日本の SNS 型投資詐欺とよく似ている。警察庁の発表(暫定値)では、2026年1〜6月の SNS 型投資詐欺は5,893件、被害額は797.9億円で、前の年の同じ時期より444.9億円多かった。1件あたりの被害額は1,362.5万円にのぼる。

最初の接点で最も多いのは「バナー等広告」だと警察庁は書いている。Instagram、X、Facebook を通じた被害も増えている。広告で誘い、偽の画面で利益を見せ、もっと入れさせ、引き出せなくする。この型は、欧州の事件と日本の被害で同じだ。

今回の摘発で目を引くのは、詐欺をする人と、偽のサイトを作って貸す業者が分かれていた点だ。サイトを用意する業者がいれば、詐欺グループは自分で技術を持たなくても、本物らしい取引の画面をすぐに用意できる。見た目がきちんとしていても、本物のしるしにはならない。

今すぐやること

  1. SNS の広告や、知らない人からの投資の誘いで知ったサイトやアプリには、お金を入れない。
  2. 業者の名前を、金融庁の登録業者の一覧で確かめる。載っていなければ取引しない。
  3. 画面の「利益」を信じない。偽のサイトでは、数字はいくらでも作れる。少額でも実際に引き出せるかが、ひとつの目安になる。
  4. 「引き出すには手数料や税金が要る」と言われたら、それ以上払わない。詐欺の典型の流れだ。
  5. 少しでもおかしいと思ったら、警察庁が案内する警察相談専用窓口(#9110)か、消費者ホットライン(188)に相談する。

背景

偽の取引サイトと電話センターを組み合わせた投資詐欺は、欧州で何年も摘発が続いている。BleepingComputer によると、2024年5月には12か所の詐欺の電話センターが閉鎖され、2025年7月にはスペインの警察が、5,000人を超える被害者から集めた4億6,000万ユーロ超を洗浄した暗号資産投資詐欺のグループを摘発した。

電話センターを1つつぶしても、サイトを貸す業者が残れば、別のグループがすぐに同じ仕掛けを使える。今回のように、道具を貸す側までたどる捜査は、仕組みの根を断つねらいがある。日本でも、サイトや広告、連絡用のアカウントを、詐欺をする人とは別の人が用意している可能性がある。手口の型を知っておくことが、いちばんの備えになる。

技術者向けの詳細
  • 発表日: 2026年11月3日。Help Net Security によると、捜索は同じ週の火曜日に行われた。
  • 規模: 17か所を捜索、サーバー100台超を押収、7人を逮捕(Eurojust)。被害を受けたかもしれない人は少なくとも50の国(Europol)。損害の見積もりは400万ユーロ超(Eurojust)。
  • 体制: Itzehoe 検察(ドイツ)が主導。Eurojust は2つの共同捜査チーム(JIT)を立ち上げた。1つはアルバニア・ドイツ・ポーランド、もう1つはアルバニア・Kosovo。Europol は分析とデジタル鑑識の専門家を出し、アルバニアと Kosovo に派遣した。
  • 押収したサーバーが何を載せていたか(偽サイトの本体か、顧客の管理か)は、発表では細かく分けて書かれていない。
  • 日本の数字: 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」。2026年から特殊詐欺の分類が改められ、SNS 型投資詐欺は特殊詐欺の手口の1つとして数えられている。
  • 組織での備え: 社員向けの注意喚起では、「広告で知った投資サイト」「取引画面の利益」「出金のための追加の支払い」の3点を、典型的な合図として伝えるとよい。

出典

一次情報

報道

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