要点
- OpenAI の CEO が「年齢を確かめた大人には官能的な文章も許す」と予告した ChatGPT の成人向けモードは、2026年3月に無期限で止まったと報じられ、いまも始まっていない。
- 一方で、使い方から利用者の年齢を推し量り、18歳未満とみた人には性的な会話などを制限する仕組みは、2026年1月から順に提供が始まっている。
- X の AI「Grok」で実在の人の写真が性的に加工された問題では、日本・英国・EU の当局が動いた。日本政府は、利用者も加害者になりうると注意を呼びかけている。
何が起きたか
OpenAI の CEO の Sam Altman は、2025年10月14日(米国時間)の X への投稿でこう書いた。12月に年齢の確認を広げるのにあわせて、「大人の利用者を大人として扱う」考えから、確認が済んだ大人には erotica(官能的な文章)なども許す。
ところが公開は遅れた。2026年3月26日には、Financial Times が「OpenAI は成人向けモードの計画を無期限で止める」と報じた。TechCrunch によると、社内外から反対の声が出ていた。TechCrunch が問い合わせると、OpenAI の広報は「付け加えることはない」と答えた。2026年10月の時点でも、始める時期は示されていない。
成人向けモードの土台になるはずだった年齢の仕組みは、もう動いている。OpenAI は2026年1月20日、「年齢予測」を一般向けのプランで始めた。アカウントを作ってからの長さ、よく使う時間帯、長い期間の使い方、本人が申告した年齢などから、18歳未満らしいかを推し量る。18歳未満とみた人には、性的・恋愛的・暴力的なロールプレイ(AI に役を演じさせるやりとり)などを減らす設定がかかる。大人なのに誤って判定された人は、本人確認サービスの Persona で自撮り写真などを出せば、制限を外せる。OpenAI は、Persona が身分証や自撮り写真を確認後7日以内に消すと説明している。
画像では、もっと深刻なことが起きた。2025年の末から、X に組み込まれた Grok で、他人の写真を性的に加工する使い方が世界で広がった。英国の放送・通信の規制当局 Ofcom は2026年1月12日に、X への正式な調査を始めた。Ofcom は、同意のない性的画像や、子どもを性的に描いた画像にあたりうるとしている。欧州委員会も1月下旬、EU のデジタルサービス法に基づいて X の調査を始めたと報じられている。
日本の利用者への影響
OpenAI は、ChatGPT の年齢予測を順次提供すると説明している。EU では、地域の要件に対応するため、数週間以内に展開するとしていた。日本の報道(Impress Watch)は、順次提供を始めたと伝えている。提供が届けば、大人でも使い方によっては18歳未満と判定され、一部の答えが制限されうる。成人向けモードは止まったままで、日本で使えるようになるかも分かっていない。
Grok の件では、日本政府が動いた。内閣府で AI 戦略を担当する小野田紀美大臣は、2026年1月16日の会見で、X 社に早く改善するよう求め、書面での報告も求めたと述べた。改善が見られなければ、AI 法に基づく指導も含めて手を考えるとした。ただし、AI 法に罰則はない。大臣は、他人の画像には著作権や肖像権などがあると指摘し、利用者も加害者になりうると注意を呼びかけた。この会見の時点では、X 社から正式な連絡はまだ来ていないと大臣は述べていた。
今すぐやること
- ChatGPT の「設定」→「アカウント」で、自分に18歳未満向けの制限がかかっていないかを見る。誤りなら直せる。ただし、自撮り写真や身分証を出すことになるので、OpenAI と Persona の説明を読んでから決める。
- 子どもが ChatGPT を使う家庭では、保護者による管理機能を設定する。OpenAI によると、使えない時間帯を決めたり、子どもに苦しんでいる様子が見えたときに通知を受け取ったりできる。
- 他人の写真を AI で性的に加工しない。共有もしない。小野田大臣は、利用者も加害者になりうると注意を呼びかけている。
- 自分や家族の写真が勝手に加工されて出回っていたら、画面を保存してから、そのサービスに報告する。警察や公的な相談窓口にも相談する。
背景
チャット AI が性的な話題をどこまで扱うかは、2025年から各国で規制の議題になっている。米国の FTC(連邦取引委員会)は2025年9月11日、友だちや恋人のようにふるまう AI について、OpenAI、Meta、Character Technologies、X.AI など7つの会社に情報を出すよう命じた。子どもへの害をどう測り、どう減らしているかを調べるためだ。
カリフォルニア州では、こうした「コンパニオン AI」を運営する会社に向けた法律(SB 243)が、州知事の署名で成立した。利用者が未成年だと分かっているときに、AI だと伝えることや、性的な内容を防ぐ手立てなどを求めている。Character.AI は2025年10月、18歳未満の利用者が AI キャラクターと自由に会話する機能をやめると発表したと報じられている。
成人向けの機能は、大人の自由を広げる。ただし、そのためには、子どもをきちんと見分けられることが前提になる。年齢を推し量る仕組みが誤れば、子どもが性的な内容に触れるか、大人が身分証を出すよう求められる。成人向けモードが止まったことは、この線引きがまだ難しいことを示している。
技術者向けの詳細
- ChatGPT の年齢予測(OpenAI、2026年1月20日)
- 使う信号: アカウントの古さ、活動する時間帯、長い期間の使い方、申告した年齢など
- 18歳未満とみた人は、制限のかかった設定になる
- 誤判定のときは Persona で確認する(自撮り写真、身分証)。OpenAI は、Persona が7日以内に消すと説明している
- EU は地域の要件に合わせるため、あとから展開すると OpenAI は説明していた
- 成人向けモード: Altman の投稿(2025年10月14日)で予告。2026年3月26日に FT が無期限停止と報じた。OpenAI の広報は TechCrunch に「付け加えることはない」と答えた
- Grok の性的画像の件
- Ofcom: 2026年1月12日に Online Safety Act に基づく調査を始めた。2026年10月14日の更新で、証拠を集めたうえで、違反があったかを判断する段階に入ったとした。結論はまだ出ていない
- 欧州委員会: DSA に基づく正式な手続き。Grok の機能を EU で出す前に、リスクを評価して減らしたかを調べる(報道によると対象は34条・35条・42条)
- 日本: 内閣府が X 社に改善を求め、書面で問い合わせた(2026年1月16日の大臣会見)
- 米国の動き: FTC は FTC 法6条(b)に基づき7つの会社に命令(2025年9月11日)。カリフォルニア州 SB 243 は州知事の署名で成立。年1回の報告義務は2027年7月1日から