要点
- 米国の Flock Safety は、通った車のナンバーを読み取るカメラを警察などに売っている。TechCrunch のまとめでは、2026年の夏から少なくとも10の自治体が、このカメラをやめる方向に動いた。
- やめた理由は自治体ごとに違う。連邦の移民当局が地元のデータを検索していた懸念、職員の悪用、住民に知らせないまま入れたこと、州の法律が変わりそうなこと、などだ。
- 「誰がいつどこを通ったか」の記録は、ほかの機関に共有されると、もとの目的を超えて使われうる。日本でも、ナンバー読み取りや防犯カメラのデータを誰に渡すかを考えるうえで参考になる。
何が起きたか
Flock Safety は、2017年にできた米国の会社だ。主な製品は、道ばたに立てるカメラで、通った車のナンバーを自動で読み取って記録する。こうしたカメラを ALPR(自動ナンバー読み取り装置)と呼ぶ。警察は、盗まれた車や行方不明の人の車を探すのに使う。TechCrunch によると、米国では10万台を超える Flock のカメラが動いている。
TechCrunch は2026年11月5日、夏から少なくとも10の自治体が Flock をやめる方向に動いたと報じた。いくつかの例を挙げる。
- El Paso County 保安官事務所(コロラド州): 9月30日に、Flock のカメラをすぐにやめると発表した。契約は更新しない。Joseph Roybal 保安官は、自分たちの使い方のルールには自信があるとしたうえで、Flock の今後と、コロラド州で予想される法律の変更に懸念があると述べた。
- Asheville(ノースカロライナ州): 報道によると、市議会は8月25日に5対2で契約を終えることを決めた。あわせて、市の職員が Flock で集めたデータを見る・検索する・共有することを停止させた。
- New Bedford(マサチューセッツ州): 報道によると、市議会は10月22日に8対3で Flock のカメラを禁じた。同じ日に市長は、仕組みを悪用した疑いで警察官2人を辞めさせた。カメラは内部の調査が始まってから止めてある。
- League City(テキサス州): 11月の選挙で住民投票にかけられ、警察が Flock のカメラを使うことを禁じる案が通った、と報じられている。
- Ithaca(ニューヨーク州): 夏より前の3月に、市議会が全員一致で解約を決めた。報道では、プライバシーやデータの共有への懸念が理由として挙がっている。決議を出した議員は、この仕組みが移民を守る「サンクチュアリ都市」の方針に合わないと述べた。
一方、Cleveland(オハイオ州)は契約を続けた。そのかわりに、移民に関わる検索を制限し、データを見られる範囲を市の警察に絞った。
日本の利用者への影響
今回の話は、米国の自治体と警察のことだ。
ただ、日本にも似た仕組みはある。警察の「Nシステム」(自動車ナンバー自動読取システム)だ。駐車場や商業施設でも、ナンバーの読み取りや防犯カメラは広く使われている。違いは、データを誰が持ち、誰に渡すかにある。
- 会社や店のカメラは、個人情報保護委員会のQ&Aによると、写った画像で特定の個人を識別できる場合に個人情報にあたる。それを扱う会社など(個人情報取扱事業者)は、個人情報保護法のルールに従う。
- Flock の場合は、会社が仕組みを提供し、たくさんの警察や自治体が、互いのカメラのデータを検索できる。この「つながり」が、米国で問題になった。
今すぐやること
- 会社や店で防犯カメラ・ナンバー読み取りを使っているなら、映像やナンバーを誰が見られるか、外の誰かに渡す決まりがあるかを確かめる。
- 保存する期間を決めて、要らなくなったデータを消す。
- 委託先のクラウドを使うなら、契約で、データを誰が持つか、ほかの会社や機関に渡すことがあるかを確かめる。
- カメラで撮っていること、何に使うかを、入り口などに掲示する。
背景
Flock をめぐる不安が大きくなったのは2025年だ。ワシントン大学人権センターは2025年10月、ワシントン州の警察の Flock の監査ログ(誰がいつ検索したかの記録)を調べた報告を出した。報告によると、少なくとも8つの機関が国境警備隊と直接データを共有していた。共有を許していない少なくとも10の機関の記録にも、国境警備隊の検索が残っていた。地元の警察が「ICE」(移民・関税執行局)を理由に、ほかの機関のデータを検索した記録もあった。
Flock は、ICE とは契約も直接のつながりも無く、データを持つのは客の自治体だと説明している。連邦の機関向けの試しの運用は、2025年8月にやめたという。さらに2026年8月には、新しい客のデータを残す期間の標準を30日から7日に縮め、検索に事件の番号を必ず付けさせる、などの変更を発表した。Flock は TechCrunch に、自治体の決定は尊重するが、カメラを外せば安全は後退する、と答えている。
それでも、解約の動きは止まっていない。仕組みをどう直しても、一度入れた記録が共有の網に乗ること自体を問題にする自治体が出てきた。
技術者向けの詳細
- Flock の説明では、ナンバーの文字を読み取ったあと、全米50州のナンバーの形を学ばせた機械学習の仕組みで確かめる。読み取りごとに確からしさの点を付け、点が低い読み取りは警察への通知に使わない。
- 2026年8月の変更(Flock の発表)
- 残す期間の標準を7日にする(今の客はいまの設定のまま。期間は各自治体が決める)
- 年末までに、全部の検索に事件の番号を必須にする。緊急の検索は例外として、管理者の確認に回す
- おかしな使い方を見つけて管理者に知らせる機能を必須にし、条件に当たった利用者は自動で止める
- MFA(パスワードのほかにスマホなどでも本人確認する仕組み)を必須にした。Bishop Fox による外部の点検と、欠陥の届け出の窓口を始めた
- ほかの機関が検索できる罪の種類を、自治体が絞れるようにした
- Flock の説明では、連邦の機関との共有は初めは切ってあり、2026年1月からは1つのスイッチで連邦との共有を全部止められる。
- ワシントン大学人権センターの報告では、Renton の警察の共有の設定にある相手は91の組織だったが、監査ログには最大6,511のネットワークにまたがる検索が残っていた。設定の画面と実際の検索の範囲が合わない例として挙げている。
- Flock を使う機関の担当者は、共有の設定だけでなく監査ログも見て、どの機関が何を理由に検索しているかを確かめるのがよい。



