要点
- Truffle Security は、ネットに漏れたまま今も使える API キー(サービスを使うための合言葉)を、発行した会社と組んで無効にする無料の取り組みを始めた。
- 2022年から見つけた、今も使えるキーは約140万件あるという。去年持ち主に知らせたキーの81%は、6か月たっても使えたままだった。
- 参加する会社のキーは、持ち主が気づかなくても止められることがある。突然サービスが止まる前に、自分のキーが漏れていないか確かめておきたい。
何が起きたか
Truffle Security は、漏れた秘密情報を探すツール「TruffleHog」を作っている会社だ。2026年11月4日(米国時間)、公式ブログで「Secrets Revocation Program」を発表した。
この会社は、GitHub、GitLab、Docker Hub、npm、PyPI、Hugging Face、Android アプリなどの公開データを調べている。2026年に調べた量は 20PB を超えるという。見つけたキーは、そのとき本当に使えるかを一つずつ試す。発表によると、使えると確かめたキーは2022年から約140万件になった。2026年10月には、およそ2分半に1件のペースで、使えるキーが新しく見つかっていた。
問題は、持ち主に知らせても止まらないことだ。Truffle Security は、去年 GitLab と Bitbucket で見つけて知らせた21,981件のキーのうち、81%が6か月後も使えたと報告している。2009年11月に GitHub に載った AWS のキーが、2026年7月の時点でまだ使えた例もあったという。
そこで、持ち主ではなく、キーを発行した会社に直接渡すことにした。やり方は2つある。
- 発行元が失効の窓口を用意し、Truffle Security が確かめたキーをすぐに失効させる。持ち主への連絡は発行元がする。
- 確かめたキーを、見つけた場所と一緒に発行元へ送る。発行元は14日以内に失効させるか、できない理由を説明する。
参加は無料で、2ページの契約を結ぶだけだという。発表の時点で16の発行元が参加した。名前が出ているのは Hugging Face、Notion、Vercel、Resend、RubyGems、Twilio の6つで、残りの10は明かされていない。
日本の利用者への影響
日本の組織や利用者への影響についての報告は、一次情報には無い。ただ、Vercel、Notion、Twilio、Hugging Face は日本の開発者もよく使う。これらのキーを公開の場所に置いたままの人は、ある日いきなりキーが止まり、自分のサービスが動かなくなるかもしれない。止められるのは悪用を防ぐためだが、慌てないように先に確かめておくのがよい。
今すぐやること
- 公開している GitHub のリポジトリ、Docker のイメージ、npm のパッケージ、Hugging Face のデータセットに、キーが入っていないか確かめる。過去の変更の履歴にも残るので、今のファイルだけでは足りない。
- 漏れていたキーは、まず発行元の管理画面で新しいキーを作り、アプリを新しいキーに切り替えてから、古いキーを無効にする。ファイルから消すだけでは、キーは使えたままだ。
- AI のコード支援ツールの設定ファイルも見る。Truffle Security は、こうした設定ファイルの中に、使えるキーを2,655件見つけたと報告している。
- Vercel や Twilio など参加している会社から「キーを失効させた」という連絡が来たら、本物の連絡かを管理画面で確かめてから、新しいキーに替える。
- 請求の画面を見て、身に覚えのない使い方が無いか確かめる。特に AI のサービスのキーは、他人に使われると料金がかさむ。
背景
漏れたキーは、攻撃の入り口になる。Sysdig は2024年5月、盗んだクラウドのキーで他人の AI サービスを勝手に使う手口を「LLMjacking」と名づけて報告した。料金は持ち主が払う。Sysdig は、最悪の場合は1日に4万6,000ドルを超えうると見積もった(実際の被害額ではなく、試算)。
Truffle Security のブログによると、2026年7月の OpenAI のサイバー評価では、AI のエージェントが公開データセットの中に Hugging Face の使えるトークンを14件見つけ、1日もたたずに Hugging Face の本番環境の秘密情報まで手に入れたという。
発行元が自分から止めると、効き目は大きい。Google は2024年6月16日から、漏れた Google Cloud のサービスアカウントのキーを標準で無効にしている。Truffle Security の調べでは、知らせるだけだった頃は72%が使えたままだったが、自動で無効にしてからは11%に下がった。Hugging Face、GitHub、Anthropic、OpenAI、Slack も知らせを受けたキーを失効させており、使えたままのものは多くて2.2%だった。一方で、知らせる窓口が無い Telegram のボットのトークンは53%が使えたという。
AI がコードを書く場面が増えたことも、漏れが増える理由に挙げられている。発表によると、キーを漏らしたコミットのうち、AI のエージェントが署名したものは2026年5月に6.8%になった。
技術者向けの詳細
- 一次情報: Truffle Security の発表(Luke Marshall、Dylan Ayrey、2026-11-04)。
- 発行元の参加の申し込み: labs.trufflehog.com/partner-revocation/request/。まだ参加していない発行元向けに、43,699件の確かめ済みのキーが待っているという。
- 2026年7月、The Stack v3(2025年8月までの GitHub のスナップショット)のキーを試し、543,699件が使えた。
- Resend のキーの4分の3は Docker のイメージから、Vercel のキーの半分超は Hugging Face のデータセットから見つかった。
- 自分のリポジトリを調べる(オープンソースの TruffleHog。使えると確かめられたものだけを出す):
trufflehog git https://github.com/<org>/<repo> --results=verified
trufflehog filesystem ./ --results=verified
trufflehog docker --image <image>:<tag> --results=verified
- GitHub は公開リポジトリの secret scanning を無料で自動で動かしている(GitHub Docs)。リポジトリの Security タブで警告を確かめる。
- 履歴からキーを消しても、フォークやキャッシュに残りうる。消すより先に失効させる。サービスごとの失効の手順は、Truffle Security がリンクしている howtorotate.com にまとまっている。
- 再発を防ぐには、
.envを.gitignoreに入れる、push protection や pre-commit のスキャンを使う、短命のトークンや OIDC に切り替える、などが効く。

