要点
- D-Link の管理型スイッチ DGS-3130-30TS に、管理者のパスワードを書き換えられたり、設定が外にもれたりするおそれのある欠陥が複数見つかった。
- 直したファームウェア(機器の中のソフト)はまだ無い。D-Link は出す日も決めておらず、いまある対策は回避策だけだ。
- 狙うには、そのスイッチと同じネットワークに入る必要がある。D-Link によると、研究者は試験の場で悪用できることを示した。
何が起きたか
D-Link は2026年11月6日(日本時間の同じ日の夜)に、スイッチ DGS-3130-30TS についての注意(advisory SAP10523)を出した。スイッチは、社内の PC やプリンターを LAN(建物の中のネットワーク)につなぐ機器だ。DGS-3130 は「管理型」で、設定を変えたり、遠くから見張ったりできる。
欠陥を見つけたのは、Spectrum Community Solutions のネットワーク技術者 Giresh Kumar Enugu だ。D-Link が報告を受けたのは11月2日で、そのわずか4日後に注意を出した。
D-Link によると、欠陥は大きく2つに分かれる。
1つめは DDP(D-Link Discovery Protocol)だ。これは、同じネットワークにある D-Link の機器を見つけて管理するための仕組みである。ここで本人の確かめ方とアクセスの絞り方、情報の扱い方に弱いところがある。D-Link は、起こりうることとして次を挙げている。
- DDP の管理の機能を、許しなく使われる
- 機器やネットワークの設定がもれる
- 管理者のパスワードを勝手に変えられる
- 機器を初期化される、止められる
- SNMP(機器を見張る仕組み)の合言葉がもれる
2つめは、ファームウェアの守りの作りだ。SSH(遠くから機器を操作する仕組み)の設定、OS のパスワードの守り方、ファームウェアの暗号の扱いと、中に入っている鍵の守り方に問題があるとされる。D-Link はこれを DDP とは別に調べている。
D-Link によると、研究者はいくつかの欠陥を、試験の場で実際に悪用してみせた。一方で、現実の攻撃に使われたという話は advisory に無い。CVE 番号(欠陥ごとの通し番号)は申請中か予約済みで、まだ公開されていない。
日本の利用者への影響
DGS-3130 シリーズは日本でも売られた。ディーリンクジャパンは2020年5月に6機種を発表しており、Impress の報道によると、GIGA スクール(小中学校に1人1台の端末をそろえる国の施策)の教室のフロアや、中くらいの会社・自治体の LAN に向くとうたっていた。DGS-3130-30TS は、そのうちの1機種だ。
ただし、欠陥が確かめられたのは DGS-3130-30TS のハードウェア版 B1 だけだ。日本で売られた機体が B1 かどうか、いまも日本で売っているかは、確かめられなかった。ほかの DGS-3130 の機種や、ほかの D-Link のスイッチが当たるかは、D-Link が「調べている」としている段階だ。ディーリンクジャパンから、この件の日本語の案内が出たかどうかも確かめられなかった。
学校や自治体で DGS-3130 を使っているなら、機種と版を確かめておきたい。
今すぐやること
D-Link は、修正が出るまでの間、次のようにするよう勧めている。
- 使っている機種と版を確かめる。 DGS-3130 シリーズがあるか、あればハードウェア版とファームウェアの版を、納入した業者か担当者に確かめてもらう。
- DDP を止める。 D-Link はこれを一番の対策としている。DDP で機器を見つけたり管理したりしていると、その作業に響くことがある。
- 管理の窓口を絞る。 SSH・Web の管理画面・SNMP は、管理用に分けたネットワークと、決めた管理者の PC からだけ使えるようにする。インターネットからは見えないようにする。
- 初めから入っている SNMP の合言葉を消す。 使うなら、より安全な SNMPv3 にする。
- 設定の控えを取り、記録を見張る。 設定のバックアップを機器の外に残し、勝手な再起動・設定の変更・初期化が起きていないかを見る。乗っ取りが疑われたら、社内の決まった手順で対応する。
背景
スイッチは目立たないが、会社や学校のネットワークの要だ。乗っ取られると、つながる機器の通信を止められたり、ネットワークの作りを知られたりする。
すぐ前には、Zyxel のスイッチ GS1900 の欠陥(CVE-2026-7273)が実際に狙われた。調査会社 GreyNoise は2026年9月に、48の国の996台からデータが持ち出されたと報告した(Help Net Security の報道による)。米国の CISA(サイバー攻撃の対策をまとめる政府の機関)は、この欠陥を「悪用が確かめられた欠陥」の一覧に入れた。
D-Link では9月にも、古いルーター DIR-822A に修正のない欠陥が見つかっている。今回のスイッチの欠陥は、同じネットワークに入らないと狙えないとされる。ただ、ほかの欠陥で中に入られた後は、守りが弱いスイッチが次の足場になりうる。修正が出るまでは、管理の窓口を閉じておくことが大切だ。
技術者向けの詳細
- advisory: D-Link SAP10523(2026-11-06 12:16 GMT 公開、状態は「Partial」)
- 確かめられた機種: DGS-3130-30TS、H/W Rev. B1
- 調べられたファームウェア: 2.00.B014、2.00.B034、2.04.000、2.04.001(欠陥によっては一部の版だけが当たる)
- 調査中: ほかの DGS-3130 の機種、ほかの D-Link のスイッチ
- D-Link の注意: ハードウェアの版がちがうと、ファームウェアが合わないことがある。修正版が出たら、自分の版に合うものか確かめる
- CVE: 申請中か予約済み。公開されたら advisory が更新される
- D-Link が示す回避策(詳しくは advisory):
- グローバルとインターフェースの設定で DDP を無効にし、状態を確かめて設定を保存する。advisory には
show ddpで確かめるとある - SNMP の
public/privateを消し、できれば認証と暗号化つきの SNMPv3 にする - SSH・Web・SNMP は決めた管理ホストからだけにし、ファイアウォールでも絞る。D-Link は、スイッチ自身のアクセス制御や VLAN の分け方だけに頼らないよう勧めている
- 設定のバックアップを取り、管理者のアカウントを見直し、思わぬ再起動・設定の変更・初期化を見張る
- グローバルとインターフェースの設定で DDP を無効にし、状態を確かめて設定を保存する。advisory には
- DDP を止めても、ファームウェアの守りの欠陥(SSH・認証情報・暗号の鍵)は直らない、と D-Link は書いている
