要点
- Anthropic は、Claude に銀行口座やクレジットカードの口座をつなぎ、支出を分析させる新しい機能「Personal Finance」をベータ版として始めた。
- Claude が読むのは、残高と最大24か月分の取引(金額・日付・店名など)だ。Anthropic は、Personal Finance の画面の中での会話を AI の学習には使わないとしている。
- いまは米国の銀行と、米国の有料プランの人だけが使える。ただ、作った表や共有リンクには口座の数字が残るので、使い方には気をつけたい。
何が起きたか
Anthropic は2026年11月5日(米国時間)、Claude の新しい機能「Personal Finance」を発表した。銀行やカードの口座をつなぐと、「先月は外食にいくら使ったか」のような質問に、Claude が実際の取引をもとに答える。
口座をつなぐのは、米国の Plaid という会社のサービスだ。Plaid は、アプリと銀行のあいだをつなぐ会社である。利用者は Plaid の画面で銀行を選んでサインインし、Claude に見せる口座を選ぶ。Anthropic は、Claude が銀行のパスワードを求めることも、見ることもないと説明している。
- お金の状態: 口座の残高。カードなら利用限度額も
- お金の動き: さかのぼって最大24か月の取引。1件ごとに、金額と日付、店の名前、分類、銀行が付けた明細の文字が含まれる
- どの口座かを見分ける情報: 銀行名、口座の名前と種類、口座番号のうち末尾の4桁
投資・ローン・カードの口座では、残高や限度額は読むが、持っている株などの中身や売買の記録、金利や契約の条件は読まない。機能は読むだけで、お金を動かすことはできない。
学習に使わないと Anthropic が約束しているのは、Personal Finance の専用の画面(ハブ)でのやりとりに限られる。ふだんのチャットに口座の数字を書き込んだ場合は、その人がふだん選んでいるプライバシー設定のとおりに扱われる。
データは、チャットを消すまで履歴に残る。口座の情報を使ったチャットは、Claude の「記憶」の機能には保存しない作りだという。
日本の利用者への影響
いまは日本では使えない。ヘルプ記事には、この機能は Pro・Max・Ultra のプランで「米国のみ」のベータと書かれている。つなげる銀行も米国の銀行だけだ。米国の外からや、一部の VPN(通信を別の場所から出しているように見せる仕組み)を使うと、メニューに出ないとも書かれている。Free・Team・Enterprise のプランも対象外である。
日本では、2018年に施行された改正銀行法で「電子決済等代行業」という登録の制度ができた。家計簿アプリの会社は財務局に登録し、銀行と一つずつ契約を結んで、銀行が用意した API(決まった形でデータを受け渡す窓口)でつなぐ。一方、Claude の場合は、Anthropic が銀行と直接つながるのではなく、あいだに Plaid が入る。データは Anthropic と Plaid の両方の手に渡る。
今すぐやること
日本の利用者は、いまは使えない。米国で使う人や、日本で始まったときに備える人向けに書く。
- つなぐ口座をしぼる。 全部の口座をつなぐ必要はない。分析したい口座だけを選ぶ。口座の名前や明細の文字に、口座番号が全部入っていることがあるとヘルプ記事は注意している。
- 人に見せる前に中身を確かめる。 チャットを共有リンクで渡すと、受け取った人にも口座の金額が見えてしまう。Claude に作らせた表やアプリ(Artifact)は、もとのチャットを消しても自分で消すまで残る。
- やめるときは「外す」と「消す」の両方をする。 口座を外しても、チャットや作った表は自動では消えない。必要なら自分で消す。有料プランが終わっても、口座はつながったままだ。Plaid 側の管理画面(my.plaid.com)からも外せる。
- 数字は銀行の画面で確かめる。 残高には1〜2日の遅れが出ることがある。同じ口座を別々のログインでつなぐと、合計に2回入ってしまうこともある(Anthropic によれば、銀行の表示が同じなら1回だけ数える)。Anthropic も、大事な数字は銀行で確かめるよう勧めている。
- Plaid の規約も読む。 学習に使わないという約束は Anthropic のものだ。Plaid は Plaid の規約とプライバシーポリシーでデータを扱う。
背景
AI に家計のデータを渡す動きは、Claude が初めてではない。OpenAI の ChatGPT も、Plaid を通して口座をつなぐ機能を出している。Claude の機能は、9月ごろから「Claude Money」という名前でアプリの中に見つかったと報じられていた。
Plaid のプライバシーポリシーには、集めたデータを、新しいサービス(AI システムを含む)の開発に使うことがあると書かれている。アプリ側が接続を外すと、データは原則として自動で消す作りだという。ほかのアプリとの接続が残っているときなどは、例外になる。
お金のデータは、漏れたときの被害が大きい。つなぐ先が増えるほど、守るべき場所も増える。便利さと引きかえに、どの会社にどこまで渡すのかを知っておくことが大切だ。
技術者向けの詳細
- 対象: Pro・Max・Ultra(米国のみ、ベータ、順に公開)。Web・Desktop・iOS・Android。Claude Duet・予定タスク・Cowork・Claude Code では使えない。Projects でも動かないことがある
- 接続: サイドメニューの Personal Finance →「Link accounts with Plaid」。最大16の銀行。Plaid の手続きは10分以内に終える必要がある
- 外すとき: 選べるのは銀行のログインごとで、そのログインでつないだ口座はまとめて外れる(口座を1つずつは選べない)。すべての銀行を一度に外すこともできる。残る最後の銀行を外すとダッシュボードが初期化され、ウィジェットや予算などの設定は元に戻せないので注意
- 自動で外れる場合: Team・Enterprise の組織へ移り始めた時点、または Claude のアカウントを消す処理が終わったとき
- Plaid 側: my.plaid.com(Plaid Portal)で接続を見たり外したり、データを消すよう求めたりできる
- 読み出しの許可: 初期の状態では、Claude は口座を読むたびに確認を出さない。チャットで Plaid を使わせるかどうかは、入力欄の「+」から開く Connectors で切り替える。Web・Desktop ではオン・オフの切り替え、スマホのアプリでは Plaid のツールを「Blocked」か「Always allow」に設定する(Android の項目名は Set all tools)。選んだ設定は、あとから始めるチャットにも効く
- できないこと: コード実行を使ったチャットや、Artifact から開いたチャットでは、口座のデータは使えない。また口座のデータを読んだチャットでは、Word・Excel・PowerPoint・PDF を扱う作業やコードを動かす作業が失敗することがある、とヘルプ記事は書いている。安定して出せるのは文章と表、それに .csv などのテキストのファイルだ
- Artifact の共有: 中に入っている数字は、あとから残した分も含めて、開いた人の画面にそのまま出る。さらに、開いた人自身が Personal Finance を使っていて Plaid を許していれば、Artifact はその人の口座を読む
- データの書き出し(export)には、Personal Finance のダッシュボードはまだ入らない



