警戒被害が起きている。または、起きれば重く広い

ARTEX 悪用、韓国で820万件流出 日本企業も標的に

ソウル警察庁は AI 自律型ペンテストツール ARTEX などを使い90社超から820万件を盗んだ7人を摘発。日本でも JPCERT/CC が同ツールの悪用を注意喚起し、ほぼ日本だけを狙う攻撃用のサーバーも見つかった。

要点

  • 韓国のソウル警察庁は、AI が自動で侵入を試みる道具「ARTEX」などを使い、90を超える会社や団体から約820万件の情報を盗んだとして7人を摘発した。
  • 主犯の男は、AI に切り替えてからの44日間だけで約60社に侵入したとされる。警察は、AI によって攻撃の規模が大きく増えたと説明している。
  • 日本でも JPCERT/CC が ARTEX の悪用を名指しで注意喚起した。GMO サイバーセキュリティ byイエラエの調べでは、同じ道具を使う攻撃用のサーバーが、ほぼ日本だけの約20社を狙っていた。

何が起きたか

ソウル警察庁は2026年10月26日、不正な侵入と恐喝などの疑いで、32歳の A 氏ら7人を摘発したと発表した。韓国の報道によると、A 氏は10月15日に逮捕された。ほかの6人も摘発されたが、身柄は拘束されず、在宅のまま検察に送られた。

被害の規模は大きい。盗まれた個人情報と社内の業務資料は約820万件にのぼる。侵入された先は韓国内の90を超える会社や団体で、警察は2025年9月からの約13か月にわたる犯行とみている。被害先には病院や大学、学習塾のほか、大企業グループの会社やゴルフ場も含まれる。件数が最も多かったのは保険販売会社3社の322万件だった。脅された会社は38あり、要求額は合わせて3億6000万ウォンだった。ただし、支払いが確認されたのは1社の30万ウォンだけだった。

怖いのは速さである。警察によると、A 氏が生成 AI を使った侵入の道具に切り替えたのは2026年8月末だった。そこから10月13日までの44日間で、約60社に侵入したとされる。1日に1社を超えるペースだ。報道では、A 氏の経歴も伝えられている。IT を学校で学んだわけではなく、技術はインターネットなどで身につけた。2019〜2022年には、セキュリティ会社でペネトレーションテスト(依頼を受けて、模擬的に侵入を試す仕事)を担当していた。警察は、生成 AI を悪用した大規模なハッキングで犯人を摘発した、韓国で初めての例としている。

警察の説明では、A 氏は初め、Web サイトの弱点を探す既存の道具を使っていた。AI の道具に替えてから、攻撃の規模を大きく広げたという。

ARTEX は、中国の開発者が2026年7月に無料で公開した道具だ。下見から弱点の悪用、データの持ち出しまでを、人の手をほとんど借りずに進められるとうたっている。開発者は10月8日、「悪用(misuse)」を理由に挙げて公開をやめた。しかし Wiz によれば、その時点ですでに1万2000を超えるコピーが出回っていた。

ほかの攻撃者も使っている。CrowdStrike と Zscaler は、韓国の金融機関を狙った攻撃で ARTEX が使われたと報告した。Microsoft は10月21日、中国の国家系とみるグループ「Storm-0940」が ARTEX を使い、2250を超える組織の Microsoft 365 にサインインを試みたと公表した。

日本の利用者への影響

日本もすでに狙われている。

JPCERT/CC(日本でサイバー攻撃の情報を集めて注意を呼びかける組織)は、国内で相次ぐ不正アクセスについての注意喚起を10月23日に更新した。悪用が確認された道具として Cairn、CyberStrikeAI、ARTEX を名指ししている。狙われているのは、公開している Web サービスの弱点や管理の不備だという。

日本企業を狙った攻撃の裏でも、ARTEX が動いていた。GMO サイバーセキュリティ byイエラエが10月19日にブログで明らかにした。ScanNetSecurity の報道によると、ARTEX を動かしていた攻撃用サーバーの1台は、同社が見えた範囲では、ほぼ日本だけを狙っていた。狙われたのは約20社で、そのうち9社が同じ業種のサイトだった。また、標的とされた企業のうち、2026年9〜10月に情報漏えいを公表した企業は8社あったという。日本の会社に的を絞った攻撃用サーバーは、ほかにも6台見つかっている。

今すぐやること

  1. 公開している Web サイトやサービスを洗い出す。 終わったキャンペーンのサイトや試験用の環境、使わなくなったはずのサーバーも含める。担当者が誰も覚えていないサイトが、いちばん狙われやすい。
  2. JPCERT/CC の注意喚起に載っている不審な接続元が、自社のアクセス記録にないか確かめてもらう。 社内の担当者か委託先に頼む。記録を見る間隔が週に1回なら、もっと短くできないかも相談する。1日1社のペースの攻撃には間に合わない。
  3. Metabase(データを集計・表示するソフト)を使っていないか確かめる。 使っていれば、修正版に更新されているかを担当者に確認する。日本で実際に悪用されている。
  4. ログインや検索の画面に、短時間の大量アクセスを止める仕組みがあるか確かめる。 社外に見せていないつもりの裏側の仕組み(API)も含め、権限のない人がデータを取れないかも点検する。
  5. 外部のサービスや委託先に渡している権限を見直す。 Microsoft 365 などにつないだ外部アプリの一覧を見て、使っていないものや権限が広すぎるものを外す。

背景

ARTEX はもともと、許可を得た相手の守りを確かめるための道具として公開された。しかし一度配られたコードは、公開をやめても回収できない。

Wiz は Storm-0940 の攻撃を調べ、使われた技術そのものはどれも以前からあるものだと述べている。新しいのは、止められても AI が自分でやり方を変え、試し続けることだ。賢いというより、疲れない。

韓国の事件は、この「疲れなさ」が国家系のグループだけのものではないことを示した。セキュリティ会社で模擬侵入の仕事をしていた個人が、AI の道具に替えてから44日で約60社に侵入したとされる。日本企業の公開しているサイトが韓国より堅いと考える根拠は、いまのところない。

技術者向けの詳細
  • JPCERT/CC at260030(10月8日公開、10月23日更新)。ケース E「AI を用いたペネトレーションテスト基盤を悪用した攻撃試行」を追加した。ケースごとに不審な送信元 IP アドレスが載っており、User-Agent の例として curl/7.88.1 と python-requests/2.34.2 も挙がっている。公開 Web サーバーと WAF のログを、少なくとも2026年9月以降について検索する。User-Agent は正規の通信でも使われるため、IP アドレスと組み合わせて見る。
  • Metabase CVE-2026-72898(SQL インジェクション)。at260030 のケース C で、実際の悪用として挙がっている。修正版が当たっているかを確認する。インストールの有無は、コンテナ一覧、パッケージ一覧、資産管理台帳で確かめられる。
docker ps --format '{{.Image}}' | grep -i metabase
  • ARTEX: Go 製のマルチエージェント LLM フレームワーク。2026年7月に GitHub で公開され、10月8日にクローズドソース化された。その時点でフォークは1万2000を超えていた(Wiz)。
  • CrowdStrike(10月7日): 韓国の金融機関を狙った攻撃で、主なバックエンドに DeepSeek v4.1-flash が使われ、GLM-5.3 と Grok 4.6 も併用されていた。
  • Zscaler: 侵入には SQL インジェクションと認証回避が使われた。足がかりは、問い合わせ窓口のポータルや社員用モバイルアプリの API サーバーのように、本業の周辺で外部に公開されていた Web アプリ。
  • Microsoft / Storm-0940(10月21日): ConnectWise のクラウドバックアップを経由して、2250以上の Microsoft 365 テナントにサインインを試みた。10月11日だけで失敗ログオンは11万1000件を超えた。最初に標的にしてから特権アクセスを得るまで3時間を切った例が複数ある。ベンダー側の認証情報が奪われ、そのアプリに与えていた権限がそのまま使われた形だった。テナントの OAuth 連携アプリと、委託先に与えている権限を棚卸しする。
  • Wiz: パスワードスプレー、OAuth コールバックの操作、テナント間アクセス制御の試験を、エージェントが連鎖させていた。JavaScript のバンドルやソースマップから、API のエンドポイントが割り出されている。別に、JPCERT/CC at260030 のケース B では、一般公開しているスマートフォンアプリを解析して API のエンドポイントやキーを特定する手口が挙がっている。非公開のつもりの API でも認可チェックを確認し、本番環境ではソースマップを公開しない。
  • レート制限: ログイン・検索・一覧取得のエンドポイントにかける。短時間に大量かつ連番的に送られるリクエストを抑えられる。

出典

一次情報

報道

参考

記事は、運営者が生成 AI を活用して作成し、内容を確かめたうえで公開しています。 誤りに気づいたら編集方針の連絡先へ。

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