要点
- TeamViewer に欠陥が見つかった。遠隔操作される側のPCが細工をすると、つないで操作する側のPCが止まったり、プログラムを勝手に動かされたりするおそれがある。
- 起きるのは、悪意のある相手か、すでに乗っ取られた相手のPCに、自分からつないだときだけだ。ただ、その相手にふつうにつなぐ以上の操作はいらない。
- 修正版は 15.83 で、TeamViewer は2026年10月27日に公開した。サポート担当者のPCを優先して更新したい。
何が起きたか
TeamViewer は、離れた場所のPCを画面越しに操作するソフトだ。TeamViewer は2026年10月27日、セキュリティ情報「TV-2026-1011」で3つの欠陥を直したと発表した。その1つが CVE-2026-111585 だ。
ふつう、遠隔操作で気をつけるのは「操作される側」のほうだ。知らない人に自分のPCを操作されるのが怖いからだ。この欠陥は逆で、操作する側(つなぎにいった側)が攻撃される。
TeamViewer によると、攻撃が成り立つのは、利用者が攻撃者の手にある Host(操作される側)か、乗っ取られた Host に、自分から遠隔操作でつないだときだ。そうしてつながると、Host 側から操作する側の TeamViewer を止められる。OS によっては、操作する人の権限でコードを動かされることもあるという。TeamViewer は、問題の場所を画面を処理する部分とし、種類を整数オーバーフロー(数の計算があふれて、値がおかしくなる不具合)としている。
原因は、Remedio の報告がくわしい。Remedio は、メモリを用意するときと、書き込みを許すときとで、別々の数を見ていることが問題だと説明している。画面の大きさをもとにした掛け算があふれると、用意されるメモリは本来より小さくなる。一方、書き込んでよいかの判定は、Host が伝えた画面の大きさを基準にしたままだ。その結果、用意した場所の外にデータが書き込まれる。
この欠陥は、イスラエルのセキュリティ企業 Remedio の研究者 Omri Dar 氏が、2026年8月14日に TeamViewer に報告した。Dar 氏は10月29日に報告を公開した。実験は Windows で行われた。Remedio によると、Host 側は好きなときに、操作する側の TeamViewer を落とせる。さらに、更新済みで Windows の守りの仕組みも働いている状態で、操作する側のPCに任意のプログラムを起動させるところまで確かめた。ただし、ネットワークだけで攻撃を最後まで通したわけではない。壊すためのデータは、Host 側でフック(処理に割り込む仕組み)を使って置いた。報告は、これを通信で届くデータの代わりとして使ったと書いている。
日本の利用者への影響
日本で TeamViewer がどのくらい使われているかや、日本の組織への影響は、この記事では確かめられていない。TeamViewer は、bulletin を公開した時点で、実際に悪用された例は把握していないとしている。Remedio の報告にも、実際の攻撃を見たという記述は無い。
気をつけたいのは、攻撃を受けるのがサポートする側だという点だ。サポート担当者は、毎日いろいろな相手のPCにつなぐ。相手がサポートを頼むふりをした攻撃者だったり、相手のPCがすでにウイルスに乗っ取られていたりすると、担当者のPCが入口になりうる。担当者のPCには、社内のシステムや多くの客先につなぐための情報が入っていることが多い。担当者は「自分が守る側だ」と思っているので、攻撃に気づきにくい。
今すぐやること
- TeamViewer の版を確かめる。 15.83 より前なら更新する。TeamViewer は、すべての利用者にできるだけ早く最新版にするよう強く勧めている。設定を変えて避ける方法は示されていない。
- サポート担当者のPCを先に更新する。 欠陥があるのは操作する側のソフトだ。Windows・Mac・Linux の TeamViewer 本体、持ち運び用の Portable 版、Android の Remote Control アプリが対象になる。Remedio は、サポート担当者は他人のPCを直すのが仕事で、この欠陥では、そうして直しにつないだ相手のPCから、担当者のPCでコードを動かされうると説明している。
- 古い版を使っている場合も直す。 Windows 7・8 向けの 15.64 や、14.7、13.2 にも、それぞれ修正版が出ている。古い版を使い続けている部署がないか確かめる。
- 知らない相手からの「つないでほしい」に注意する。 修正が終わるまでは、相手が本当に自社の客や社員か確かめてからつなぐ。様子がおかしいPCにつなぐときは、とくに気をつける。
背景
遠隔操作のソフトは、つないでいる間、2台のPCの間で画面や操作のデータをやりとりし続ける。作る側は「操作される側から届くデータは正しい」と考えがちで、そこに抜けが出やすい。Dar 氏は報告の中で、この欠陥を「攻撃者が操作される側で、被害者が操作する側」とまとめている。
TeamViewer は同じ更新で、ほかに2つの欠陥も直した。1つは Linux と Mac の版で、細工した画面のデータや、細工した録画ファイル(.tvs)を開かせると、プログラムを動かされるおそれがあるものだ。もう1つは Mac で、PCを使える権限の低い人が管理者の権限を取れてしまうものだ。bulletin では、この Mac の欠陥は Host も対象とされている。修正版の一覧にも、Host の 15.83 が載っている。
技術者向けの詳細
- CVE-2026-111585: 画面データを展開する処理の整数オーバーフロー(CWE-190)。結果として、ヒープのバッファがあふれる。CVSS 3.1 は 8.8(
AV:N/AC:L/PR:N/UI:R/S:U/C:H/I:H/A:H)。 - 影響を受ける版(TV-2026-1011 による)
- Full Client(Portable を含む)15.83 より前(Windows / Linux / macOS)
- Legacy V15.64(Windows)、V14.7・V13.2(Windows / Linux / macOS)
- Remote Control(Android)15.83 より前
- Remedio は Windows の 15.80.6.0 で確かめた。9月公開の 15.82.6.0 にも、欠陥のある処理が残っていたと書いている。
- 修正版
- Full Client / Host / Portable / Android アプリ: 15.83
- v15.64(Windows 7・8): 15.64.10
- v14.7: 14.7.48868
- v13.2: Windows 13.2.36231、Linux 13.2.154008、macOS 13.2.154007
- OS ごとの違い: TeamViewer の bulletin は、コード実行を “depending on the platform” としている。Remedio の報告が示したのは Windows での結果で、macOS・Linux・Android については触れていない。
- 同じ bulletin にある別の欠陥
- CVE-2026-92372: Linux・macOS の画面画像デコーダの範囲外書き込み。8.8。細工した .tvs ファイルからも起きる。
- CVE-2026-92374: macOS の特権ヘルパーの TOCTOU とシンボリックリンクの扱い。ローカルで root を取られる。7.8。Host も対象。
- 別の bulletin TV-2026-1012 は、Remote Management アドオンのローカル権限昇格の欠陥6件を直したもの。
- Linux でパッケージの版を見る:
dpkg -l | grep -i teamviewer # Debian/Ubuntu 系
rpm -qa | grep -i teamviewer # RHEL/Fedora 系
- 2026年10月29日の時点で、CISA の KEV カタログ(実際に悪用された欠陥の一覧)には入っていない(The Hacker News による)。