警戒被害が起きている。または、起きれば重く広い

NIKKE の PC ランチャーが改ざん、遠隔操作マルウェアが配られた疑い

「勝利の女神:NIKKE」の PC ランチャーのスクリプトが第三者に改ざんされた可能性があると公式が発表した。研究者は、遠隔操作とパスワード・ブラウザ情報・暗号資産の窃取ができる K2F が配られたと報告している。

要点

  • 「勝利の女神:NIKKE」の公式は、PC ランチャーのスクリプトが第三者に改ざんされた可能性があると発表し、11月4日 2時30分ごろ(日本時間)に修正した。
  • 研究者の報告によると、改ざんは9月27日からで、ランチャーを開くと PC を遠くから操れるマルウェアが入ることがあった。
  • 当たった PC では、NIKKE のアカウント、ブラウザに保存したパスワードや Cookie、暗号資産のウォレットの情報が盗まれたおそれがある。

何が起きたか

2026年11月4日、日本向けの公式 X(@NIKKE_japan)が異常を知らせた。PC 版のランチャーが使うスクリプトのファイルに、外部の誰かが手を加えたかもしれない、という内容だ。公式は、どこまで影響が及んだかをまだ調べている最中で、今後の対応は改めて別のお知らせで伝えるとしている。クライアントの修正は、11月4日の2時30分ごろに済ませたという。利用者が何をすべきかは、発表に書かれていない。

改ざんが起きた場所は、ゲームを出している Level Infinite の CDN(ファイルを世界中に配る仕組み)だ。独立の研究者 MotherSphere が GitHub で公開した報告によると、NIKKE のランチャーはこの CDN に置かれた JavaScript のファイルを読み込んで動く。そのうち公式の4つのファイルが、日本時間の9月27日午後3時40分ごろに書き換えられていた。中には攻撃者のコードが入り、攻撃者が用意した insightjs.com から別のプログラムを取りにいく作りになっていた。

取りにいった先のプログラムは K2F という遠隔操作の道具だと、研究者は見ている。ランチャーが開いている間、攻撃者がこの PC でできたとされるのは、大きく分けて次の2つだ。

  • 盗む: ブラウザに残るパスワードと Cookie(ログインしたままにするための情報)、NIKKE のログイン情報、暗号資産のウォレットの情報、開発用の鍵やトークン(サービスに入るための合い言葉)
  • 操る: 中のファイルを見て持ち出す、画面を撮る、好きな命令を動かす

さらに Windows では、ランチャーを閉じても Chrome と一緒に動き続ける部品を置く仕組みもあったという。ただし BleepingComputer は、この部品が実際に感染した PC に置かれたか、暗号資産が盗まれたかは分かっていないと伝えている。

研究者の報告では、マルウェアが動いたのは遅くとも10月23日からで、ランチャーを開くたびに毎回ではなかった。きれいなファイルへの差し替えは11月3日から4日にかけて進み、4日の夜(日本時間)までに、確かめた配信サーバーすべてで元に戻った。攻撃者がどうやって配信元に書き込めたのかは分かっていない。研究者は、自身の分析は1台の感染した PC と、コメント欄に寄せられたほかの被害者の報告がもとだとしている。プログラムそのものは動かさず、中身を読んで調べたという。

日本の利用者への影響

NIKKE は日本でも多くの人が遊ぶゲームで、日本向けの公式が自ら発表している。当たるのは PC 版のランチャーを使っていた人だ。研究者は、Linux や Steam Deck で Proton(Windows のゲームを動かす仕組み)を通して遊んでいた人も、ファイルを見られるおそれがあるとしている。

日本で何人が感染したかは、資料には出ていない。公式は、影響の範囲を確認している途中だとしている。

なお、攻撃者が使っていた insightjs.org には、日本語を含む4つの言葉で「ランチャーを閉じて」という警告が出ている。BleepingComputer によると、これは公式のものではなく、誰が出しているかも分からない。案内は公式のお知らせで確かめたい。

今すぐやること

  1. 9月27日から11月4日の間に PC 版の NIKKE ランチャーを開いたかを思い出す。開いていたら、感染したかを確かめるまで、ランチャーを開かない。
  2. 研究者の MotherSphere が公開した確認の道具(NIKKE Launcher Check)か、下の「技術者向けの詳細」の方法で、感染の跡があるかを見る。研究者は、ランチャーの一時ファイルを消す前に確かめるよう勧めている。
  3. 跡が見つかったら、その PC はネットにつながず、パスワードもその PC では打たない。研究者は、パスワードを感染していない別の端末から変えるよう勧めている。まず NIKKE(Level Infinite)のアカウントを変え、そのあとでメールや Discord、銀行、ブラウザに覚えさせていたサイトのパスワードも変える。研究者は、二段階認証(パスワードのほかにスマホなどでも本人確認する仕組み)をオンにすることと、ログイン中のセッションをすべて切ることも勧めている。
  4. PC のブラウザで暗号資産のウォレットを使っていた人に、研究者は新しいウォレットを作って資産を移すよう勧めている。
  5. 感染した PC そのものについては、研究者が、攻撃者が何でも動かせた以上、Windows を入れ直すことを考えるよう勧めている。BleepingComputer も、最新のウイルス対策で PC 全体を検査し、感染していれば Windows を入れ直すよう勧めている。今後出る公式のお知らせも確かめる。

背景

今回の話は、サプライチェーン攻撃(正規の配布元や部品を通じて、使う側を攻撃するやり方)の一つだ。利用者は公式のランチャーを開いただけで、怪しいものを入れた覚えはない。それでも、公式の配信元が書き換えられれば、正規のアップデートの通り道でマルウェアが届く。

研究者によると、NIKKE のランチャーの本体は管理者の権限を求める作りで、中にブラウザも入っている。こうした道具が狙われると、ゲームと関係のないブラウザのパスワードや仕事の鍵まで危なくなる。

ソフトの配布元が書き換えられた例は、これまでもある。2017年には PC の掃除ソフト CCleaner の正規版にマルウェアが混ぜられ、2023年には電話のソフトを作る 3CX の配布物が改ざんされた。今回は、配信元に攻撃者がどう入ったかが分かっておらず、研究者は別のドメインで再び使われるおそれもあると書いている。

技術者向けの詳細

時刻は研究者の報告(GMT)。日本時間は +9 時間。

  • 改ざん: 2026-09-27 06:41〜06:42 GMT、playerinfinite.com(Tencent COS)上の4ファイル
    • aegis-fix.min.js / images.7fec4c32.js / FeedList.feb647c9.js / vue-bucket.min.js
  • 修正:
    • FeedList.feb647c9.js は 10-28 に配信元で差し替え。ただし一部の CDN サーバーは 11-04 03:12〜03:21 GMT まで改ざん版を配っていた
    • 残る3ファイルは 11-03 17:04〜17:23 GMT に差し替え
    • 11-03 に配信元へ FeedList を再アップロード(sg-gpts は 20:13、na-webassets は 20:19 GMT)
    • 11-04 11:20 GMT に確かめた4台の CDN サーバーで全ファイルがきれい
  • 版: 公式は版の番号を出していない。報告のコメントに nikke_launcher.exe 0.0.6.841 の記載あり(未確認)
  • 通信先(遮断の対象): insightjs.com、analytics.insightjs.com、insightjs.org、89.127.233.127、89.126.250.172
  • 感染の跡(NIKKE のインストール先から見て)
    • Launcher/intl_service/debug.log に k2f_chan registered、adopted <uuid>、agent started as <コンピューター名>
    • Launcher/log/tinyget/tinyget.*.log に insight.bundle のダウンロード成功(curl perform success と 0 でない total=)
    • Launcher\log\tinyget に先頭が 1B 4C 4A 01(LuaJIT のバイトコード)のファイル
    • %APPDATA%\nikke_launcher\tbs_cache\Local Storage\leveldb\ に k2f.agent(圧縮で見えないこともある)
  • 残り続ける部品(Windows)
    • HKCU\Software\Classes\CLSID\{E77CC89B-7401-4C04-8CED-149DB35ADD04}
    • %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\PlatformExperienceHelper\<64桁の16進>\platform_experience_helper.dll(PlatformExperienceHelper のフォルダ自体は Chrome の正規のもの)

ログを調べる例(PowerShell):

Select-String -Path "<NIKKEのインストール先>\Launcher\intl_service\debug.log" -Pattern "k2f_chan"
Test-Path "HKCU:\Software\Classes\CLSID\{E77CC89B-7401-4C04-8CED-149DB35ADD04}"
  • 注意点(研究者による): 1台の PC で Defender がこの DLL を検出しなかった。ペイロードは複数の版があり、ハッシュが合わなくても安全とは言えない。確認の後、tbs_cache を消してからランチャーを開く。消し方・後始末の手順は研究者の報告を見る。
  • BleepingComputer が挙げたサンプルの SHA-256: 4bfaf98a6b863fa79554d9eeeb18870c3f92d552d62f4bd35a72d19ea68526af

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