情報被害の話ではない

GM、運転データ販売で米36州などと和解 2億2千万ドル

GM が運転のくせや位置のデータを本人に知らせずに売り、保険料に使われたとされる件で、米国の36の州などと2億2,000万ドルで和解した。和解の中身と、日本の運転者が自分の車で確かめたいことをまとめる。

要点

  • GM は、運転のくせや位置のデータを売ったとされる件で、米国の36の州などの司法長官と和解した。2億2,000万ドルを払う。
  • 訴えによると、データはデータブローカー(個人の情報を集めて売る業者)を経て保険会社に渡った。保険料が上がった人もいたとされる。
  • 日本でも、トヨタのように通信でメーカーへデータを送る車がある。何に使うことに同意したかを、自分で確かめておきたい。

何が起きたか

ワシントン州の司法長官は、米国時間の2026年10月29日(日本時間では10月30日)に和解を発表した。和解を主に進めたのはワシントン州とオレゴン州である。ワシントン DC を含む、あわせて36の州などの司法長官が加わった。GM が払う額は2億2,000万ドル。このうちワシントン州の分は1,230万ドルである。

州側が問題にしたのは、GM の「Smart Driver」というプログラムだ。運転のくせを記録するもので、2016年から2024年にかけて数百万人の運転者が登録された。発表と訴状にある州側の主張を、データの流れにそって整理する。

  • 記録したもの: 乗った回数、走り始めと終わりの時刻、急ブレーキ、急な加速、速度の出しすぎなどである。位置のデータも含む。
  • 渡った先: データはデータブローカーに売られ、そこから保険会社に渡った。保険会社は、保険料を決めるのに一部これを使った。
  • 利用者への説明: 州側によると、GM は運転者に対し、自分の運転をより安全にするための道具だとうたっていた。保険会社には、本人がはっきり同意しない限りデータを渡さない、という説明もしていた。
  • 登録の集め方: 州側は、GM が販売店に登録を増やすよう強く促していたと主張する。営業の人のボーナスは、一部が OnStar(GM の通信サービス)などの登録数で決まっていた。販売店どうしも登録数で順位をつけられていた。登録の多くは、車を買うときに販売店で行われた。そのとき販売店の人が、客の同意を得ないまま規約を受け入れていたとされる。
  • アプリの表示の誤り: 州側によると、OnStar のアプリで「登録されていない」と表示された運転者が37万人を超えていた。実際には登録されており、データも集められて売られていた。GM はのちに、この誤りを本人に伝えないまま登録を解除した。それまでに渡ったデータは、ブローカーや保険会社の手元に残ったとされる。

New York Times が2024年に報じたあと、GM は Smart Driver をやめた。The Record によると、GM の広報は「2024年にやめた製品についての合意だ」と述べた。

和解では、お金のほかに、GM のデータの扱いを変えることも決まった。販売の現場では、客が同意のないまま登録されないよう、GM が販売店を監督し、研修をする。データそのものについては、運転と位置のデータを集める前と人に渡す前に、本人からはっきりした同意を得ることが求められる。集める運転データは減らす。個人の情報を守るための全社の仕組みも作り、社内と社外の評価を受ける。

日本の利用者への影響

Smart Driver について、日本の利用者が対象だったという報告は、今回の一次情報にはない。一次情報が述べているのは、米国の運転者についてである。

ただ、通信でメーカーにデータを送る仕組みは、日本の車にもある。たとえばトヨタは、コネクティッドサービス(T-Connect/G-Link)の利用を始めた車から、車載通信機を通じてデータを集めると公表している。集めるのは、車の速さ、エンジンの回転数、走った距離、位置などである。使い道には、運転のデータで保険料が変わる自動車保険の安全運転スコア、交通情報、道路の点検がある。

日本の各メーカーが、同意をどう取っているか。提供を止める設定が、画面のどこにあるか。この記事で参照した資料には、こうした情報はない。自分の契約と規約で確かめてほしい。

今すぐやること

  1. 自分の車が通信サービスに入っているか確かめる。車検証の控えや契約書、メーカーのアプリを見る。販売店で入った場合は、自分で同意した覚えがなくても入っていることがある。
  2. メーカーのアプリや会員サイトで、データの扱いと、第三者への提供の項目を見る。保険会社やほかの会社に渡す、と書かれていないかを見る。
  3. 運転のデータで保険料が変わる保険に入っているなら、どのデータが誰に渡るかを契約書で確かめる。
  4. 分からなければ、メーカーの問い合わせ窓口に聞く。データの提供を止められるか、集めたデータを消せるかを聞く。
  5. 車を売るとき、手放すときは、アプリと車の結びつきを外す。通信サービスの解約もしておく。

背景

GM のデータの扱いは、ほかの役所からも問題にされてきた。米国の FTC(連邦取引委員会。消費者を守る役所)は、2026年1月14日に GM と OnStar への命令を確定させた。命令の期間は20年。GM は5年のあいだ、位置と運転の様子のデータを消費者信用調査の会社に渡せない。米国の利用者は、自分のデータの写しを求めたり、消すよう求めたりできるようになる。位置のデータを集めないようにする設定も、選べるようにすることになった。

2026年5月には、カリフォルニア州とも和解したと報じられている。テキサス州の訴えは、今も続いている。

車は、乗る人がいつ、どこへ、どう運転したかを細かく記録できる。そのデータは、保険の値段のような、暮らしのお金に直接つながる使い道がある。今回の件は、販売店で手続きを済ませる流れの中で、本人が知らないうちに同意したことにされうる、という例でもある。

技術者向けの詳細
  • 同意判決(consent decree)は、ワシントン州司法長官の発表ページにある「Read the consent decree.」というリンクから読める。
  • 原告側の分担: 共同の主導はワシントン州とオレゴン州。執行委員会はコロラド、コネチカット、デラウェア、イリノイ、ケンタッキー、メリーランド、ミネソタ、ニュージャージー、ユタ、バーモントの各州。ほかに DC を含む24の州などが加わった。
  • 和解で決まったこと(発表から): 販売店での登録について、GM による監督と研修。社内外の評価を含む全社のプライバシーの仕組み。集める運転データの最小化。運転と位置のデータについて、集める前と渡す前の「affirmative express consent」(はっきりした同意)。
  • ワシントン州の発表は、データを消すこと、決まりの期間、消費者へのお金の返し方には触れていない。細かい条項は同意判決の本文で確かめてほしい。
  • FTC の最終命令(2026年1月14日、2-0の採決): 期間20年。消費者信用調査の会社への提供を5年禁じる。集める・使う・渡す前に同意を取る(緊急の救助隊への位置の提供などは例外)。データの写しを求める仕組みと、消すよう求める仕組みを作る。正確な位置の取得を止められるようにする。位置と運転の様子のデータを集めないことを選べるようにする(一部例外あり)。
  • 日本の組織で車のデータを扱う場合(フリート管理、テレマティクス保険など)は、同意の記録を誰がどう残すかを見直す。販売の現場で代わりに同意する運用がないかも確かめる。

出典

一次情報

報道

参考

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