警戒被害が起きている。または、起きれば重く広い

仏血液センターEFSの冷蔵室、温度設定を書き換えられる

フランスの血液センター EFS の3つの拠点で、血漿を保管する冷蔵室の温度と霜取りの設定が外から書き換えられた。欧州のスーパーの冷凍庫への攻撃の続報。CERT-FR は Danfoss AK-SM/AK-SC、Copeland・Dixell xweb を名指ししている。

要点

  • フランスの血液センター EFS の3つの拠点で、輸血用の血漿を保管する冷蔵室の温度と霜取りの設定が、外から「とても高い温度」に書き換えられた。
  • EFS は、警報ですぐに気づいて製品をほかの施設に移したので、血液製剤は失われず、健康への影響も見つかっていないとしている。
  • 10月にフランスのスーパーで起きた、冷凍庫を遠隔で温める攻撃が、医療の施設にまで広がった形だ。冷蔵設備を外から管理する機器がネットにつながったままだと、同じことが起きうる。

何が起きたか

フランスで輸血用の血液を集めて供給する公的機関、Établissement Français du Sang(EFS)は、2026年11月3日に発表を出した。報道によると、問題が起きたのは11月2日(月)だ。

EFS の発表によると、冷蔵設備を納めている外部の会社(委託先)がサイバー攻撃を受けた。その影響で、EFS の3つの拠点にある冷蔵室の監視・制御の仕組みが乱され、温度と霜取りのしきい値が「とても高い温度」に設定された。冷蔵室には、輸血用の血漿や、薬の原料にする血漿、研究用の検体が入っていた。

EFS によると、血液製剤は失われておらず、健康への影響も確認されていない。被害を防げたのは、EFS 自身の監視と警報の仕組みが、異常を早く知らせたからだという。対応として、問題の機器は止めるか、操作を取り戻した。保管していた製品は、念のため別の施設に移した。EFS は、ANSSI(フランスのサイバーセキュリティの国の機関)や保健省と一緒に対応している。

The Record によると、EFS は、自分たちが直接ねらわれたのではなく、冷蔵設備の会社を通じた攻撃だったと話している。EFS は、その会社の名前や、使っていた機器のメーカー・型番を明かしていない。フランスの週刊紙 Le Canard enchaîné は、会社の名前を Coolworld と報じた。franceinfo によると、Coolworld は「ほかの会社から仕入れた部品の弱点が原因で、影響を受けた台数は限られる」とする声明を出した。EFS についてはふれていない。設定温度が110℃にされたとも報じられているが、EFS の発表ではこの数字は確かめられない。

だれがやったかは分かっていない。The Record によると、名乗り出た集団はいない。

スーパーの件とのつながり

10月11日の夜から12日の朝にかけて、フランスの多くのスーパーで、冷凍・冷蔵のケースが外から霜取りの状態にされ、中の食品が捨てられた。これを受けて、CERT-FR(フランス政府のサイバー攻撃への対応窓口)は10月12日に注意喚起を出した。対象として名指ししたのは、店の冷蔵設備をまとめて管理する遠隔制御の機器、Danfoss の AK-SM と AK-SC、Copeland と Dixell の xweb だ。CERT-FR は、これらの機器が多数乗っ取られたことを把握しており、攻撃は「おそらく続いている」と書いている。

The Record によると、最近の攻撃で影響を受けたとされる会社は、少なくとも11の国にある。ベルギー、オランダ、スウェーデン、エストニア、アイルランド、ポルトガルなどだ。EFS の件は、この2回目の波のうち、フランスで最初に、医療の組織で最初に報じられた例だ。EFS の機器が CERT-FR の挙げた製品かどうか、スーパーの件と同じ犯人かどうかは、確かめられていない。

日本の利用者への影響

日本の組織に被害が出たかどうかは、この記事で使った資料からは分からない。

日本のスーパーや食品の倉庫、病院、血液や薬を運ぶ物流で、CERT-FR が名指しした製品や似た仕組みが使われているかも分からない。冷蔵設備の会社が遠くから見守るために、管理の機器をネットにつないでいる例は多い。自分の施設で確かめる価値がある。

今すぐやること

  1. 冷蔵・冷凍設備を管理する機器(店や倉庫全体を見守る「監視盤」など)の、メーカーと型番を書き出す。設備の会社に聞けば分かる。
  2. その機器がネットから直接見える状態になっていないか、設備の会社と社内の情報システムの担当に確かめる。CERT-FR は、ネットから直接つながる状態をやめるよう勧めている。
  3. 遠くからの保守が必要なら、VPN(会社の中のネットにだけ入れる、暗号化した専用の道)など守られた道を使うよう、設備の会社と取り決める。
  4. 霜取りの時間、設定温度、警報のしきい値が、勝手に変わっていないか見直す。初めの設定のままのパスワードは変える。
  5. 温度の警報が、夜も休日もだれかに届くか確かめる。EFS が被害を防げたのは、警報ですぐ気づけたからだ。

背景

冷蔵の設備は、もともと会社のパソコンとは別の世界で動いていた。いまは、設備の会社が遠くから故障を見つけられるよう、ネットにつなぐことが増えた。CERT-FR は、管理の画面をネットにそのまま出すことは「よいやり方に反する」と書いている。

サポートが終わった古い機器は、弱点が見つかっても直してもらえない。CERT-FR は、こうした機器をネットにつないだままにすると、乗っ取られる危険が「非常に高い」と警告している。工場出荷の状態に戻しても、弱点は残るので、また乗っ取られうるという。

スーパーの食品なら捨てればすむが、血液や薬、ワクチンは代わりがすぐには用意できない。今回は警報で守られたが、同じ仕組みは病院や薬の倉庫にもある。

技術者向けの詳細
  • CERT-FR の注意喚起: CERTFR-2026-ALE-012。初版 2026-10-12、10-13 に対象の機器を追加、10-16 に勧告を更新。
  • 対象の製品(CERT-FR): Copeland xweb、Danfoss AK-SC シリーズ、Danfoss AK-SM シリーズ、Dixell xweb。
  • CERT-FR の注意喚起に、CVE(弱点の番号)は書かれていない。
  • EFS の件で使われていた機器のメーカー・型番は公表されていない。Coolworld は、ほかの会社の部品が原因だと説明している(franceinfo による)。
  • まだ乗っ取られていない機器についての CERT-FR の勧め(要約。詳しくは注意喚起の本文を見る):
    • 柱は、外から届かない状態にすること。対象の機器に加え、公の IP アドレスで見えているほかの機器も含める。遠隔保守は、VPN か保護されたネットを通す形でだけ戻す。接続元 IP の絞り込みは、一時しのぎの扱いだ。
    • ファームウェアを更新し、霜取りの予定を中心に設定を点検する。Danfoss の機器では、セキュリティ水準を「Strict」に上げることと、初期パスワードの変更が挙がっている。
    • 設備の会社への監視データの送信を止めるなら、その前に保険の契約の条件を確かめるよう、CERT-FR は注意している。
  • すでに乗っ取られた機器: CERT-FR は、EOL(サポート終了)の機器は初期化しても弱点が直らず、また乗っ取られうると警告している。Danfoss の機器では、ネットから切り離したうえで再起動を試し、だめなら工場出荷の状態に戻して、設定をやり直してから使う流れが示されている。
  • Dixell の資料: Recommandations pour une utilisation sécurisée des superviseurs XWEB v1.0
  • 自分の持つ IP 範囲が外から見えるかは、Shodan や Censys などで、自社の範囲に限って確かめるとよい。

出典

一次情報

報道

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