要点
- Anthropic は、Claude が書いた文章に、目に見えない「透かし」(AI が作ったと後で見分けるための印)を入れている。11月3日からは、前からある旧モデルの4つにも入るとされる。
- 透かしは文章そのものに入る。だから、コピーして別の場所に貼っても残る。少し手直ししても残ることがある。
- 透かしを見分ける道具は、今は一般には公開されていない。使えるのは、審査を通った規制当局・報道機関・教育機関などに限られる。
何が起きたか
Anthropic のヘルプページによると、透かしに対応した Claude のモデルは、書いた文章に人の目には分からない透かしを入れる。Anthropic は、透かしで文章の意味・質・読みやすさは変わらない、と説明している。透かしは「メタデータ」(ファイルに付く別の情報)ではない。文章の一部なので、コピーして貼り付けても一緒に移る。
透かしはモデルそのものに組み込まれている。このため、どの使い方をしても入る。ヘルプページが挙げるのは、API(プログラムから Claude を呼ぶ仕組み)、Claude のアプリ、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tag だ。透かしは日本を含め、Claude が使える国のすべてで入る。
背景には EU の AI 法(AI Act)がある。Anthropic は、AI が作ったものの透明性についての EU の行動規範に署名した。2026年8月2日より後に EU で出すモデルは、出した日から透かしに対応している。それより前のモデルには移行の期間があり、Anthropic は透かしを順に足している。
The Decoder が、Anthropic が API の顧客に送ったメールの中身を報じた。それによると、11月3日から Claude Mythos 5、Claude Opus 4.7、Claude Opus 4.6、Claude Sonnet 4.6 の文章にも透かしが入る。Amazon Bedrock では数日遅れることがあるという。このメールは Anthropic からは公開されていない。日付やモデルの一覧は、報道と、AI のコンサルタントの Pete Sena 氏が X に投稿したメールの画面による。ヘルプページの表では、この4つのモデルはすでに、Anthropic 自身の提供する場で透かしに対応した、とされている。
見分けられる範囲には限りがある。 ヘルプページは、透かしが見つかっても「Claude がその文章を処理した」ことを示すだけだ、としている。Claude が書いたとは限らない。人が書いた文章を Claude が校正・翻訳・要約しただけかもしれないし、透かしが入った後で書き換えられたかもしれない。反対に、透かしが無くても AI が書いていないとは言えない。理由として Anthropic は次を挙げる。古いモデルで書いた、大きく書き換えた、言い換えた、翻訳した、ほかの文と混ぜた、短すぎる。
利用者のデータについて。 ヘルプページには、透かしのためにプロンプトや出力の保存の仕方が変わるかどうかは書かれていない。The Decoder によると、メールには、透かしには利用者・その組織・Claude との会話についての情報は含まれない、と書かれている。
日本の利用者への影響
透かしは世界中で入る。だから、日本で Claude に書かせた文章にも入る。仕事でも学校でも同じだ。ヘルプページを見るかぎり、利用者が透かしを切る方法は無い。
気をつけたいのは、校正や翻訳だけに Claude を使ったときだ。自分で書いた文章でも、Claude が手直しした部分に透かしが入る場合がある。今は、透かしを見分けられる組織は限られている。それでも、教育機関や報道機関は申し込めば使える立場にある。今後、使える相手は広がる見込みだ、と Anthropic は書いている。日本の大学や会社が実際に使っているかどうかは、分かっていない。
今すぐやること
- 学校や勤め先の AI の使い方の決まりを確かめる。Claude で書いた・直した文章を出してよいか、そのことを書き添える必要があるかを見ておく。
- Claude に校正や翻訳を頼んだ文章を出すときは、相手に「AI で手直しした」と伝えておくと、あとで行き違いが起きにくい。
- 透かしの有無だけで、人が AI を使ったと決めつけない。Anthropic は、透かしがあっても Claude が書いたとは限らないと説明している。評価する立場の人は特に気をつけたい。
- 自社の製品に Claude を組み込んでいる会社は、EU の AI 法の透明性の義務が自社にも当たるかを確かめる。Anthropic は、Claude を自社の製品に組み込んで提供する会社に、これを確かめるよう勧めている。
背景
AI が書いた文章を見分けるのは難しい。「AI 判定ツール」はたくさんあるが、どれもまちがえることがあると言われてきた。透かしは、AI を作る会社が最初から印を入れておく、という別のやり方だ。ほかの会社にも同じような取り組みがあり、たとえば Google は SynthID という透かしを出している。
EU の AI 法の第50条は、AI が作ったものに、機械で読み取れる印を付けるよう求めている。Anthropic が日本や米国でも同じように透かしを入れるのは、法律が求める範囲より広い。
画像などのファイルについては、Anthropic は C2PA(ファイルの出どころを記録する公開の規格)に沿った、署名付きの情報を付けている。ファイルの印は無料のツールで誰でも確かめられる。文章の透かしを確かめる道具は、まだ一般に出ていない。
技術者向けの詳細
- 一次情報: Anthropic ヘルプページ「How Claude marks AI-generated content」。
- ヘルプページの表(2026-11-02 に確認):
- Anthropic 自身の場、クラウドの相手先(AWS・Google Cloud・Microsoft Foundry)、C2PA のすべてに対応: Fable 5.1 / Fable 5 / Mythos 5.1 / Opus 5.5 / Opus 5 / Opus 4.8 / Sonnet 5.5 / Sonnet 5 / Haiku 5.5
- Anthropic 自身の場の文章の透かしだけ: Mythos 5 / Opus 4.7 / Opus 4.6 / Opus 4.5 / Sonnet 4.6 / Sonnet 4.5 / Haiku 4.5
- 11月3日の対象(顧客へのメール、The Decoder が報じた): Mythos 5、Opus 4.7、Opus 4.6、Sonnet 4.6。Amazon Bedrock では数日遅れることがある。
- The Decoder によるメールの中身:
- 透かしは言葉の選び方に入るパターン。文字やトークンは増えない。
- 料金とリクエスト・レスポンスの形は変わらない。出力が遅くなるのはわずか。
- 顧客の側で切ることはできない。
- Opus 4.6 と Sonnet 4.6 では、
temperature・top_p・top_kが既定の値のときだけ透かしが入る。自社のコンプライアンスで透かしに頼るなら、既定の値のままにするよう勧めている。
- 透かしの検出: 非公開のプレビュー。対象は規制当局・法執行機関・報道機関・ファクトチェッカー・独立した研究者・教育機関・EU の市民団体と、自社のコンプライアンスで透かしを確かめる必要のある会社。申し込みは「Claude Watermark Detector Access Request Form」から。
- 透かしが無くなりうる場合(ヘルプページ): 対応前のモデル、大きな書き換え・言い換え・翻訳・他の文との混在、文章が短すぎる。
- EU で出す Claude を自社の製品に組み込む会社は、AI 法の第50条の義務を自社で確かめる必要がある、とヘルプページは書いている。


