要点
- OpenAI・Google・Microsoft・Anthropic が、robots.txt に共通の合図を書けば、各社の AI の学習に使われることを一度に断れる仕組みを守ると表明した。
- 始まる時期は会社ごとに違い、Anthropic はすでに採用したと The Verge が報じ、Microsoft は2027年2月1日から、Google は2027年中を目指し、OpenAI は「この先数か月」としている。
- 合図を書いても、すでに集められたデータや、作り終えた AI モデルからは消えない。学習されたくない人は、早めに設定しておくのがよい。
何が起きたか
2026年10月30日(米国時間)に、大手の AI 企業が同じ日にそろって発表した。中身は「AI の学習に使ってほしくない」という意思を、全社に共通の書き方で伝えられるようにするものだ。
もとになるのは、IETF(インターネットの技術の決まりを話し合う団体)に同じ日に出された草案である。AI の学習に使ってよいかを、機械が読める形で示すための合図を決めている。書いたのは Anthropic の Kevin Kelley だ。草案は、サイトの robots.txt(検索エンジンなどの自動収集ソフトへの「ここは来ないで」という張り紙のファイル)に、__usage_ai-training という名前の合図を書くやり方を決めている。
各社の言い方は次のとおり。
- Google は Search Central Blog で、この共通の合図に2027年に対応することを目指すと書いた。合図で学習を断ったサイトは、Google 独自の「Google-Extended」という設定で断ったのと同じに扱う予定だという。
- Microsoft は Bing の公式ブログ で、2027年2月1日から、ページを集めるときにこの合図を読むとした。設定しても、ふつうの Bing の検索結果に出るかどうかは変わらないとしている。
- OpenAI は自社のページで、robots.txt の共通の合図を守ると表明し、この先数か月で入れるとした。
- Anthropic については、支持を表明し、すでに組み込みを始めたと The Verge などが報じた。ただ、記事を書いた時点で、Anthropic のヘルプページは、従来の ClaudeBot ごとの断り方だけを案内している。
日本の利用者への影響
日本のサイトでも、自分で robots.txt を書き換えられれば使える。
気をつけたいのは、自分のサイトを持たない人だ。ブログサービスや投稿サイトに作品を出している場合、robots.txt を決めるのはサービスの運営者になる。合図を入れるかは運営者しだいで、個人では設定できないことが多い(これはこちらの見立てである)。
日本の著作権法は、AI の学習のためのデータの利用を広く認めている。文化庁は「AIと著作権について」のページで、国としての考え方をまとめている。今回の合図が法律の上でどう扱われるかは、まだ分からない。
今すぐやること
- 自分のサイトの robots.txt を、誰が管理しているか確かめる。 レンタルのブログやサービスなら、運営者が対応するかを案内やお知らせで見る。
- 学習されたくないなら、共通の合図を書き足す。 Google と Microsoft が読み始めるのは2027年からだが、先に書いておけば、各社が対応したときに意思が伝わる。書き方は下の「技術者向けの詳細」を参照。
- いまの各社ごとの設定は消さない。 Google と OpenAI は、これまでの会社ごとの設定もこのまま使えるとしている。共通の合図が動き始めるまでは、こちらが頼りになる。
- 検索に出なくなることはないかを確かめる。 Microsoft は、学習を断っても Bing の検索結果には影響しないとしている。AI の回答の材料(下で説明)にするかは、別の設定になる。
- すでに学習されたものは戻らないと考えておく。 合図はこれから先の収集に向けたものである。
背景
これまで、AI の学習を断るには、会社ごとに違う名前を robots.txt に並べる必要があった。OpenAI の GPTBot、Google の Google-Extended、Anthropic の ClaudeBot などだ。AI の会社が増えるたびに書き足す手間があり、書き漏れも起きやすかった。
IETF では「AIPREF」というグループが、AI に使ってよいかを機械が読める形で示すための言葉づかいを話し合っている。今回の草案は、そこで決まりつつある「AI の学習」の定義をそのまま使う。Google は、EU の AI 法のもとでの行動規範が、robots.txt を意思を示す主な方法と認めていることにもふれている。
ただし、これは正式な標準ではない。IETF の草案のページ(datatracker)では、この草案は個人が出したものと表示され、IETF が認めたものではないとも書かれている。守るかどうかは、各社が自分で決めたことだ。表明していない AI の会社や、決まりを無視する収集ソフトには効かない。
技術者向けの詳細
- 草案:
draft-kelley-aipref-training-preference-signal-00(2026-10-30、有効期限 2027-05-03)。新しい命令は増やさず、RFC 9309 の robots.txt の書き方(グループ、パス、最長一致)をそのまま使う。 - サイト全体で学習を断り、一部だけ許す例(草案の例):
User-Agent: __usage_ai-training
Disallow: /
Allow: /press-kit/
User-Agent: *のグループは、この合図に当てはまるものとして読んではならない、と草案は決めている。*で全部を断っていても、学習についての意思は示したことにならない。合図のグループを別に書く。- 合図のグループが無ければ「意思の表示なし」。Microsoft はそのときの既定を Allow(許す)としている。
- 合図は学習に使うかどうかの表示で、収集そのものを止める命令ではない。収集を止めたいなら、これまでどおり GPTBot・ClaudeBot などの会社ごとのグループも書く。
- Google: 合図で断っていて、Google-Extended を別に書いていなければ、Google-Extended を Disallow したのと同じに扱う予定。Google-Extended を個別に書いていれば、そちらが優先される。
- Microsoft の日程: 2026-12-15 に Bing Webmaster Tools で一時的な設定が使えるようになる(NoArchive・NoCache を使うサイト向け)。2027-02-01 に新しい設定を適用。2027-03-01 以降は NoArchive・NoCache を学習や回答の材料の設定として読まない。2027-09-30 に一時的な設定が切れる。
- Microsoft は「grounding」(AI の回答の根拠として使うこと)を、学習とは別にページごとに設定させる。meta タグ
<meta name="Bingbot" content="ai-training:disallow">、ai-grounding:disallow/ai-grounding:disallowextended(Microsoft 自身のサービスだけに使わせる)、またはX-Robots-Tagヘッダーで書く。詳しくは Bing の説明。 - Anthropic の従来の断り方(ClaudeBot を robots.txt で止める。サブドメインごとに必要)は Anthropic のヘルプ。